2023(令和5)年6月議会一般質問「市内中学校統一の標準服の導入について」

質問題目2、「市内中学校統一の標準服の導入について」です。市民の方からの要望を受けて、2020年6月議会でも取り上げましたが、再度質問を行います。

 最初に、市の中学校の制服の現状についてですが、市内の中学校の制服をどうするかについては、以前の答弁にあったように、各中学校において、保護者代表、教職員代表で構成する制服検討委員会が設置され、生徒、保護者、教職員の意見も参考にしながら、各中学校が目指す教育方針や伝統文化等を重んじて、総合的に判断し決定されるものであると認識しています。そして、現在、県内では、福岡市、北九州市、久留米市、大野城市、太宰府市、筑後市などで市内統一の制服、標準服が導入されています。

 次に、昨年末から今年にかけて市内の保護者から頂いた声をそのまま2つ紹介します。まず1人目ですが、「販売店の決め方が入札の実施も不透明なまま1社独占はおかしいと思いますし、市外の業者が独占するなら、市内のお店も含めて自由に販売できるようにすべきです。」次に、2人目ですが、「筑紫野市の中学校の制服を標準服にして、どこでも自由に買えるようにしてほしいです。今、通ってる学校は、制服を春日市まで買いに行く選択肢しかありません。福岡市のお店だったこともあり不便でした。筑紫野市に制服のお店があるのに、ゆめタウンでも市外の制服が買えるのに、春日市のみでは不便です。また、説明会の日に採寸をするのも、仕事を休まなくてならず不便です。筑紫野市だけ遅れてると思います。標準服実現をお願いします。」との事でした。

 次に課題です。まず、1つ目の課題ですが、これは法的な問題ですが、2017年11月29日付で公正取引委員会が「公立中学校における制服の取引実態に関する調査について」という調査報告書を出しています。引用しますと、①制服の販売価格は、制服とシャツ等を併せた制服一式について、最も多い販売価格帯は、3万円以上3万5000円未満。②標準服を導入している自治体の平均販売価格は、導入していない自治体の平均販売価格よりも安い傾向。③学校が案内する指定販売店等が4販売店以上の場合の平均販売価格は、案内する指定販売店等が1販売店の場合の平均販売価格よりも安い傾向。④学校が制服の販売価格の決定に関与する場合の平均販売価格は、関与しない場合の平均販売価格よりも安い傾向、とのことでした。

次に、制服の取引における公正な競争の確保の手段として、学校においては、制服の取引に関与する際に、制服メーカー間及び販売店間の競争が有効に機能するよう取組が行われることを期待、とあり次の取組を上げています。具体的には、①制服メーカー及び指定販売店等の選定は、コンペ等の方法で選定する、参入希望を受け入れるなどにより指定販売店等を増やす②制服の販売価格への関与は、コンペ等において制服メーカーに求める提示価格を卸売価格にする、コンペにおいて新制服の販売価格を既存の制服の販売価格以下の価格にするよう要望する、とあります。

 最後に、学校及び販売店関係者に留意事項が次のとおり述べられています。①学校は、制服の取引に関与する際、その方法によっては、制服メーカー又は販売店の独占禁止法違反行為を誘発するおそれがある②制服メーカー及び販売店においては、自ら独占禁止法違反行為を行う場合はもちろんのこと、学校の関与を契機として行われた行為であっても、当該行為が独占禁止法違反行為の要件に該当する場合には、直接法的責任を問われること③公正取引委員会としては、学校関係者等に対して積極的に調査結果を周知し、引き続き、学校における制服の取引の動向を注視し、独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処、とあります。私は、公正取引委員会の指摘事項については、市としても可能な限り最大限の配慮が必要、と考えています。

 次に、2つ目の課題ですが、まず経済的な負担の面です。現在、学校ごとに制服を導入しているためデザインもばらばらで、価格に差があります。そのため、市内で引っ越しをした場合でも、中学校が変われば制服を買い直さなければなりません。また、学校の生徒数にばらつきがあるため、バザーなどでお下がりを買おうとしても、生徒数の多い学校では手に入りやすく、生徒数の少ない学校では手に入りにくいです。ちなみに太宰府市では、制服リレー活動としてリユース活動の取組みが行われています。

 また、現在の市の就学援助ですが、制服の購入などの新入学用品費は6万3000円支給されます。制服だけでなくクラブ活動のユニホームなどまで導入するとなると、軽く10万円以上の費用がかかり、「貧困家庭の子どもは好きな部活をするなと言われているように思える」という声もあり、制服に加えて部活動の費用もかかることを考えると経済的負担は重いと言わざるを得ません。

 3つ目の課題ですが、制服のデザインや機能面です。現在市内にLGBTQ、性的少数者の子どもがいますが、やはりその中でトランスジェンダーの子どもが悩んでいるのが、自分の心の性と違う制服を着なければならないのが非常に苦痛であるということです。性的少数者の差別や偏見をなくし相互理解を深めるために、市としてまずできることを行うべきではないでしょうか。この点、女子スラックスの導入を拡大したことは関係した方の努力を高く評価します。

 課題を整理しますと、①法的な問題があること、②各中学校の制服の仕様が異なるため公立中学校間で価格差があり、学校の人数差のせいで制服の再利用がしにくいこと、③性的少数者の子どもに対して多様性を認めるという観点から配慮が足りないことです。

 この点、学校現場から、生徒指導上、制服で各地域の学校の生徒を見分ける必要があるとの指摘があります。しかし、太宰府市が行っているようにネクタイやリボン、名札などで見分けることが可能です。

 私は、以上の課題が解決されるためには、市内で統一したデザインの標準服を新たに導入するべきだと考えます。市内で統一された標準服を導入することで、大量注文により制服業者からの納入価格を抑えることができるので、価格が安くなり、家計の経済的な負担を軽減することができます。そして、市内で制服が統一されるので再利用もしやすくなり、バザーなどで入手もしやすくなります。この制服の再利用は市の掲げるSDGs、持続可能な開発目標、市長が重点施策として掲げている環境に関する目標にも貢献するものです。その上、デザイン面や機能性を改善し、性的少数者への配慮などもすることができるので、良いことづくめです。

 市内の中学校の校長と教育委員会で構成する標準服検討委員会は、手間はかかりますが、市の新たな支出を伴うものではなく、工夫すればすぐに行えるお金のかからない取組みです。また、過去の新聞報道でもあったように、市民の方から市への要望書も提出されていると聞いています。

 そこで、質問項目1、標準服検討委員会を設置し、標準服を導入するべきではないでしょうか。執行部の見解を求めます。

 次に2つ目の項目です。

 現状と課題ですが、今年行われた選挙の投票率ですが、市長選挙は38.43%、県議会議員選挙は34.46%、市議会議員選挙は41.85%でした。いずれも50%を下回る低投票率であり、主権者教育の重要性は増しているかと思われます。

 そこで、主権者教育の一環として、市内統一の標準服を決定する際に投票を行ってはどうかといういう提案をします。いわば、「制服選択選挙」です。お隣の大野城市では、新制服デザイン投票というものが行われています。また、6月6日付のNHKニュース新潟で、「制服変更する中学校 生徒が選ぶ新デザイン選ぶファッションショー」という報道がありました。とても生徒の評判が良いものでしたので、こういった新しい取り組みを行なってはいかがでしょうか。

 そこで、質問項目2、標準服導入を主権者教育に活かすべきではないでしょうか。執行部の見解を求めます。

(教育部長 答弁)

市内中学校統一の標準服の導入について、第1項目と第2項目は関連がございますので、一括してご答弁いたします。制服の在り方につきましては、生徒、保護者、教員のそれぞれの立場で様々な考え方や意見があり、教育委員会が一律に決めるものではないと考えております。このようなことから、教育委員会としては、生徒、PTA、学校等の意見を聞きながら、標準服導入の必要性について検討してまいります。また、その際は主権者教育の視点を取り入れた取り組みとなるよう、併せて検討してまいります。