(2)「子どもの命を守る政策について」②AIを活用したアプリによる乳幼児突然死症候群の予防を/令和2(2020)年12月議会一般質問全文

だんした:次に2つ目です。乳幼児突然死症候群(SIDS、通称シズ)の予防についてです。乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、予兆や病歴、窒息などがないまま乳幼児が突然亡くなる原因不明の病気のことです。厚労省によると、近年減少傾向ですが、毎年年間100人程度が亡くなり、2018年にも約60件発生し、乳幼児の死亡原因では第4位となっています。うつ伏せになっていると、乳幼児突然死症候群のほか、窒息死の危険の発生率が高まると言われています。

この突然死や窒息死を予防するために、人工知能(AI)により赤ちゃんがうつ伏せで寝ている状態を検知して、知らせる保育所向けのアプリが開発されています。具体的には、カメラで寝ている赤ちゃんを撮影し、専用の機器に映像が送信されると、人工知能(AI)が姿勢を検知し、仰向けを「正常」、横向きを「注意」、うつ伏せを「危険」と認識し、登録しているLINE(ライン)やメールにメッセージを送信します。検出制度は85%なので、完璧ではないですが、現状保育園で行われている定期巡回による観察、うつ伏せにしない、乳児の体温を上げ過ぎない、母乳による育児を進める等の取り組みと組み合わせれば、さらに保育の安全性は高まると思います。

 人のやることですので、何らかの事情が重なって乳児がうつ伏せの状態に長時間なってしまうというミスが起きる事態も想定されます。ミスが起きないように人が十全な体制を取るのはもちろんですが、そのような不幸なミスが起きたときの次善の策を取って置くことが私は必要だと思います。

 そこで、質問項目2、「AIを活用したアプリによる乳幼児突然死症候群の予防を行うべき」ではないでしょうか。執行部の見解を求めます。

健康福祉部長(答弁要旨)所管:子育て支援課

次に、AIを活用したアプリによる乳幼児突然死症候群の予防についてですが、睡眠中の事故防止対策は大変重要と認識しており、保育所保育指針に基づく見守りを行っております。現時点では、アプリ等の導入は予定しておりませんが、他自治体の動向を注視してまいります。

だんした:項目2について再質問です。「睡眠中の事故防止対策は大変重要と認識」しているとのことですが、「筑紫野市内における公立・私立保育所における過去10年間の睡眠中の窒息や乳幼児突然死症候群の件数」についてと、「保育所運営指針に基づく見守り」とのことですが、入所時の際に、例えば「乳幼児突然死症候群(SIDS)に関する情報を保護者に提供する」とあるのですが、この「保育所運営指針通りに保育士さんはできているのか」ということについてお尋ねします。

健康福祉部長(答弁要旨)所管:子育て支援課

 本市の公立・私立保育所において、過去10年間に、睡眠中の窒息や乳幼児突然死症候群は起きておりません。また、保護者への情報提供については、各園の状況に応じ、ポスターの掲示や個別に説明するなど、周知に努めております。 

「地方自治体におけるAI・RPAの導入と今後の展開」

JIAM令和2年度第2回市町村議会議員特別セミナーに参加しました。

講師は、早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭先生でした。内容を以下まとめました。

【研修目的】
我が国は人口減少社会に入っており、今後急速な高齢化が進行する。2040年頃には総人口は毎年100万人近く減少し、自治体の税収や行政需要に極めて大きな影響を与える。特に都市圏において医療・介護ニーズの急増、社会資本の更新等、個々の自治体で解決できない行政課題が増大する。
そこで、高齢者(65歳人口)が最大となる2040年頃の大都市圏及び地方圏の自治体を想定し、医療、福祉、インフラ等の住民生活に必要不可欠なサービスについてどのような課題を抱えることになるのかを明らかにする必要がある。また、各自治体において、公的部門と民間部門で少ない労働力を分かち合う必要があり、労働力の供給制約を共通認識として、2040年頃の姿から、現在の在り方を考え、将来の住民と自治体職員の為に現時点から業務改善をしていかなければならない。
AIやロボティクスなどの最先端技術は、様々な行政分野の業務において最大限活用する事が期待され、人材面の供給制約の克服や住民の利便性向上に寄与するため、各地の先進事例を学ぶために研修に参加した。

【内容】
1.現状
職員による手作業での処理する業務が多くあるが、労働力制約のもとでスマート自治体になる必要がある。また、自治体間が個別で投資をしている重複投資をやめて、情報システム等の共通基盤を標準化する必要がある。

2.地方自治体におけるAI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入状況
AIについては、都道府県の87%、指定都市が80%、その他の市町村が14%にとどまっているが、検討中を含めると50%以上の自治体が導入に向けて取り組んでいる。RPAは、都道府県が85%、指定都市が70%まで増加した一方で、その他の市町村は18%にとどまっているが、検討中を含めると50%以上の自治体が導入に向けて取り組んでいる。

3.地方自治体におけるAIの活用事例
〇問い合わせ自動応答サービス(チャットボット)
AI(人工知能)を活用し、市民から市民からよくある問い合わせや各種証明書の発行の申請手続の仕方について、対話形式で自動応答する仕組みを構築。市民アンケートでは、80%以上の方から好意的な反応。簡易な問い合わせにはAIが対応することで、職員は対面的な対応が必要な方へ時間をかけることが可能になる。また、問い合わせの内容や年代などのデータ分析ができ、将来の行政サービスに反映することができる。

〇議事録、会見録作成作業
ディープラーニング(深層学習)により、音声認識機能が飛躍的に向上しているこれまで、各課で主催する会議録についてICレコーダーで録音し、音声を聞きながら職員が文字入力を行っていたが、音声書き起こしソフトを使用することにより、職員の事務負担軽減に寄与するのか検討した。調査の結果、会議録作成に約1500時間という膨大な時間を要していることが判明。
成果としては、導入により、数時間かけていた議事録作成が数分で完了するようになった。方言についても、事前に登録することで対応が可能であった。

〇AIによる道路管理
これまでは、市内で点検、補修が必要な道路の画像を専門職員が損傷判定していたが、それをAIで機械学習させ、画像から路面の損傷程度をAIが自動分類する研究を実施し、道路管理の省力化を実現した。

〇戸籍業務の職員業務支援AI
戸籍業務は関係法令が多く、複雑な事例も増加傾向にあることから、職員は市民の届出や問い合わせに対して審査や判断に多くの時間と労力を費やすことになり、負担となっている。また、職員の大量退職、短いサイクルでの人事異動、派遣職員の増加などによって、戸籍業務においては体系的な人材育成、ベテラン職員が培った専門的な知識や経験が次世代への継承が十分でない状況がある。この問題を解決するため、AIによる対応支援ソフトを構築し、職員の知識サポートを行い、職員からの問い合わせに自動応答できるようにした。
成果としては、経験の浅い職員でもAIを活用することで、市民対応の時間短縮と正確性の向上が図られた。

〇保育所マッチングAI
保育所の利用調整にあたって、申請者の優先順位やきょうだい同時入所希望などの市の割り当てルールを学習したAIが組み合わせを点数化した。得点の高い組み合わせを瞬時に導出することで自治体職員の保育所利用調整業務を省力化し、延べ1500時間かかっていた作業が数秒でできるようになり、職員が手作業で行った入所選考結果がほぼ一致した。入所申請者への決定通知を早期に発信でき、入所不可だった場合の迅速な対応や、親の育児休業等からのより円滑な復職が可能となった。

〇AIを活用した自立支援促進
高齢者の自立支援やケアマネジャーの業務負担の軽減を図るため、AIを活用してケアプランの作成を支援するため、認定調査項目や主治医意見書の項目を入力することにより、ケアプランを実施した場合の将来予測と共に推奨するケアプランを提案するよう構築した。人手不足が課題となっているため、介護関係職員の業務負担軽減を図り、人材を確保することが急務となっている。
成果としては、利用者の身体状況の改善や介護給付費抑制のほか、ケアマネジャーが新たな気付きを得ることができた。

〇定型業務にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用
RPAとは、通常の自動化はエクセルでもできるが、エクセル、ブラウザ、地図ソフトの起動など複数のソフトを横断的に自動的に処理する技術である。単純作業を自動化でき、職員の残業時間を削減できる。
職員へのアンケートをもとに、定型的かつ膨大な作業量が発生する業務を抽出し、業務量、難易度、RPAの導入効果、汎用性の高さを考慮して選定した市民窓口課、市民税課業務等について、RPAを活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化をテーマに官民連携による共同研究を実施した。これらの業務は、定型的かつ膨大な作業量を伴うもので、時期による業務量の変動が大きいうえ、劇的な効率化が難しく、人的リソースが割かれる業務として、処理に苦慮しており、人口が増加する自治体では負担が増大していくことが予想されていた。
成果としては、入力ミスが減少し、単純作業が自動化し職員は住民サービスに集中することができるようになった。

【まとめ】
地方自治体に求められるのは、最小の経費で最大限の効果を挙げることで、資源を最大動員することが必要である。今後、AIやRPAを活用して業務改善を行い、浮いた時間や財源で既存の住民サービスの充実や新たなサービスの創出ができるようになる。
一方で、AI・RPAでは対応できないコミュニケーションが必要な対人業務、調整業務、新しい政策の立案など創造性を発揮する業務などを行える人材が今後必要になると思われる。