令和3(2021)年6月議会 一般質問②森林環境譲与税を活用した地域活性化について

次に、質問題目2、「森林環境譲与税を活用した地域活性化について」です。

 まず、現状ですが、国から交付される森林環境譲与税は基金に積み立て、間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備等の事業に向け、対象となる森林の抽出を行うとあります。林野庁のまとめている森林経営管理制度の導入例では、流れとしては、意向調査を協議会や森林組合等に委託し、現地調査や所有者の同意取得を行い、集積計画を立て、林業経営者に再委託する配分計画の策定、事業を発注することになるかと思います。

 そこで、質問項目1、「森林状況調査業務の進捗状況」についてお尋ねします。

次に、2つ目の項目です。

まず、現状ですが、木材の価格が低迷しているのは周知のとおりですが、それに加え林業経営の構造的に大きな課題となるのが、植えてから伐採まで約50年と時間がかかるため木材需要の伸びや、社会状況の変化への対応が難しく、自分の代で収穫できないため後継者の問題も発生することです。そして、林業で最も重労働かつ過酷な作業で、離職の大きな原因となっており、そして経費もかかるのが下刈り作業です。

これを解決するために佐賀県林業試験場で開発されたのが、成長の早い「次世代スギ」です。通常より短い30年で育つため、経済性に優れ、経費のかかる下刈作業も期間も短縮され、植える本数も従来の6割程度で済むと想定されています。また、スギ花粉の発生量も一般的なスギよりかなり少なく、花粉症の発生が抑制されることから、医療費の削減にもなるかと思われます。成長が早い一方、強度は十分にあり、「三拍子そろったスギ」と言われ、2022年3月に一般向けの苗の販売を始める予定だそうです。

他にも、成長の早い「早生樹」であるセンダンを植える試みが始まっています。センダンとはアジアなどの暖かい地域に分布する広葉樹の一種で、成長が非常に早く、10~20年で伐採することができます。これまで、センダンは成長すると幹が枝分かれし木材利用が難しかったのですが、熊本県で幹をまっすぐに成長させる手法が確立し、九州や近畿地方を中心に植樹の動きが広がっています。

そこで、質問項目2、「次世代スギやセンダンを整備するべき」ではないでしょうか。現状も含めて執行部の見解を求めます。

次に、3つ目の項目です。

 林野庁は、中長期的な林業のあり方を示した「森林・林業基本計画」の改定案をまとめ、公共建築物や発電や熱利用への需要を開拓、木材自給率を2025年に5割に高めることを目指すとしています。森林資源の循環利用を進め、林業の成長産業化する必要があります。

例えば、まず成長産業の利用例の1つとして、急速に需要が伸びている木質バイオマス発電の燃料材としての利用です。木質バイオマス発電とは、木質バイオマスを燃やしてタービンを回して発電する仕組みを指します。発電方法は、製材した際の余った端材(はざい)や木質チップを直接燃焼させて、発電させる「蒸気タービン方式」が主なものです。通常なら30%程度の熱効率ですが、熱電併給ボイラーで生成した蒸気を分岐して発電と熱利用に用い、分岐した蒸気を木材乾燥等他の用途に活用することで、発電効率と熱効率をあわせれば全体として60%くらいの熱効率とすることが可能です。

また、排余熱の利用として発電の排熱(蒸気の冷却に使われた排温水等)を、農業用ハウスの加温や養殖用の水の加温等に使う方法があります。発電所設置以前から熱需要の確保、配管等の設備投資等をふまえた設計を考慮する必要があります。

他にも、EUではバイオマス発電にORC(有機ランキンサイクル)という水より沸点の低い有機媒体、例えばシリコンオイル等を利用してタービンを回し発電する仕組み、いわゆるORC発電を併用することも行われており、排余熱や余剰分を利用することが可能です。

木質バイオマス発電も木を燃やすときには二酸化炭素が発生しますが、その二酸化炭素は木が成長するときに大気中から吸収したものなので、大気中の二酸化炭素の量は変化しないという「カーボンニュートラル」という考え方が当てはまります。このため、木を燃料にすることは二酸化炭素の排出を抑え、地球温暖化防止に貢献することになります。その他にも、間伐材の収集や搬出・搬入、バイオマスエネルギーの発電所の新設や運営などを通して、新しい雇用や産業が生まれ、林業の振興、エネルギーの地産地消による地域活性化も期待できます。金融機関も長すぎる回収期間が壁となって林業への融資が難しかったのですが、木質バイオマス発電向けなら、数年でも資金回収が可能で、すでに宮崎県などでは導入が進んでいます。

次に、他の成長産業の利用例としては、木材由来の新素材であるセルロースナノファイバーなどの需要の拡大も見込めます。セルロースナノファイバーは、植物繊維由来であることから、生産・廃棄に関する環境負荷が小さく、軽量で、例えば、樹脂やゴムにセルロースナノファイバーを混ぜると、軽くて強い自動車部品が作れます。熱による寸法変化が小さく、空気を通しにくいフィルムなど、優れた特性があります。最近では、高性能蓄電池の材料としても期待されています。

他の産業への利用としては、公共建築など非住宅建築物への利用、地元の住宅会社による建設資材の地産地消などが考えられます。

森林には家具や住宅材などの木材供給はもちろん、水源のかん養や防災、景観、二酸化炭素吸収、生物多様性の保全など多様な役割があり、市の進めるSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みにも資するものです。

 そこで、質問項目3、今述べたような「林業振興で雇用創出、地元木材を活用した産業振興するべき」ではないでしょうか。執行部の見解を求めます。

【答弁要旨】(答弁者:建設環境部長)

森林状況調査業務の進捗状況は、昨年度より着手し、現状把握のため、調査対象の民有林の約50%、1,900ヘクタールの調査を行ったところでございます。

次世代スギなどの整備につきましては、所有者や関係機関に情報提供を行ってまいります。

雇用創出や産業振興につきましては、森林組合等と連携を取りながら、今後も進めてまいりたいと考えます。

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